ところで,MIは日常臨床においてどういった治療を指すのであろうか? カリオロジーの観点からは,齲蝕発症前診断をして齲窩を形成する前に再石灰化を促し,また齲窩が形成されていても治療をするべきか要観察かを鑑別診断することで,不要,かつ必要であってもより少ない介入とする.すなわち,それぞれの患者の齲蝕に対するリスク,そして発症プロセスに関する全体像を把握したうえで,トータルリスクスコアを低くコントロールできるような適切な管理を継続的に行うことで,歯質を切削するという人為的,外科的な処置を回避するあるいは先延ばしし,健全な歯列を育成,保全することであろうか.結果的に,長期的なMIを達成することに繋がる,といったようなことであろう. では接着の観点からみたMIとは何であろうか. 接着で一番重要なことは,材料の進歩ではなく接着理論の確立である. 接着とは,すなわち修復治療である.接着が難しい象牙質を含めた接着界面部における確実な接着を達成することこそが,歯質-修復物界面における辺縁漏洩の防止,すなわち齲蝕の再発の予防という観点において最重要ではないだろうか. しかし,その観点から,@最小限の歯質の削除,A既存修復処置の再評価(メタルインレー,コンポジットレジン修復,メタルコア,レジンコアなど)が行われているだろうか. カリオロジーと接着という2つの観点から,「日常臨床におけるMIとは何か」「日常臨床におけるMIのための診査・診断と治療」に関して述べてみたい.また,哲学と信念だけで処置はできない.したがって,処置に関するノウハウに関してもふれる. また,広義な意味でのMIについても言及しておかねばならない. これこそが最も重要な日常臨床におけるMIであると考える.. カリオロジーもペリオドントロジーも非常に重要ではあるが、口腔内診査の1つに他ならない.機能的咬合系である口腔内において顎機能診査も非常に重要である.また修復の基準も審美と言う事を抜きにして考えても機能的な意味において非常に重要である. それらの診断基準のもとをなす科学的な概念のどれもが等価値に重要であり、それら歯科治療を構成する全ての要素のどれ一つが欠けても適切な治療を完遂する事は出来ない. 治療で最も大切なことは,適切な治療(Optimum Treatment)を行うことであり,オーバートリートメントはもちろんアンダートリートメントも口腔内にとって,時として破壊的に働く.つまり最小の介入(MI)による治療とは適切な治療を行うことにほかならない. 適切な診査・診断に基づく治療計画の立案と,処置を治療とするに十分なスキルをもつことこそが広義の意味でのMIだと言える. したがって,広義の意味でのMIにはカリオロジー,接着理論の正しい理解と実践のみならず顎機能,ペリオドントロジー,審美修復に対する診査・診断・治療に関する科学的なアプローチなど,日常の歯科治療を形成するすべての分野が含まれる. 西川義昌 |
日時 | 参加費 | ||||||
2002年11月10日(日) 09:30〜16:30 |
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会場 | |||||||
熊本県歯科医師会館3Fホール 熊本市坪井2丁目3-6 |
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主催・お申込先 | |||||||
熊本S.J.C.D. 事務局 有限会社アワズデンタル内 |