no.17 2000/07/01

title:

舗装されていない路がまだ残っていたんだ。
少しだけ嬉しくなって僕はその場にしゃがみこんだ。
暑くなりはじめたばかりの空気を裂いて軽トラックが土埃を上げて走っていった。
視界が晴れると足元にたんぽぽが咲いているのに気がついた。

民家の間に花が咲いているってことはとても良いことなんだな、と気がついた。
見渡せば板切れでこさえた塀で囲まれた古い民家が並んでいた。
どの家にも立派な縁側があったのだが、なぜか誰もいなくて、猫さえもいないようだった。
少しだけ不安な気持ちが顔を出したので、いけないな、と思った。

陽炎の立ち始めた道路の向こうに水溜りになりそうな窪みがあった。
よく見るとアサリの貝殻が撒いてあった。
すこしだけ不安が収まった気がした。

立ち上がってまた歩くことにした。
そうしたら民家がみんな消えてプレハブのアパートが並んだ景色に戻っていた。

ああそうだったのか。
何も失ってはいなかったんだ。
僕はたんぽぽが少し好きになった。

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