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ご隠居ご隠居 源さん源さん
どうしたい、源さん。人んちに来るなり、鏡の前で、変なかっこして。
いえね、先週の「よもやま話」での「鏡は左右を入れ替えない」って話しが未だにしっくり来ないもんで
それも仕方ないじゃろ。ずっと左右は入れ替わると信じてきたんじゃからな。
へえ、そうなんですよ。第一、子供の時に、そういう風に教えられましたし、世間でも「入れ替わる」ってことになってやすでしょ。
う〜む、そうれはな、いつの世にも「迷信」というのは、なくならないということじゃろうな、きっと。
へ?迷信ですかい?迷信てぇと、縁起かつぎやら、妖怪やらの話じゃないんで?
つまりな、そういったものは、大雑把に言うと、「宗教的迷信」といったところじゃ。
はぁ・・・「宗教的迷信」
現代では、そういった迷信が風化してきている代わりに、「科学的迷信」と言えるものが幅をきかせておる。
するってえと、鏡の話もその「科学的迷信」ってわけで?
いかにもじゃ。
科学と迷信ってえと、水と油みたいなもんだと思ってましたがねぇ、あっしゃ。
いやいや、決してそうではないんじゃよ。つまりな、森羅万象を説明する理論体系が、以前は宗教じゃった。
はあ、神様がこの世を作ったとか、雷は天罰だとか。
まあ、そういったところじゃ。現代ではそれが科学にかわった。ただそれだけじゃ。でな、真理を探究しておる当事者達の言葉が一般に伝播する過程で、変質したり、させられたり、あるいは誤解されたりで迷信を生むという仕組みはそのまんまなんじゃよ。
なんでまた、そんなことになっちまうんですかね。
一般人にも分かりやすく言おうとしたのが、アダになったり、利益誘導のためにだったりな、いろいろじゃよ。
はぁ〜
第一、一般人が求めているのは、「真理」ではなく「納得の行く説明」だったり「刺激的な情報」だったりするからの。
じゃ、世間一般で信じられていることで、実は違うってことがまだまだあるんで?
ザクザクある。特に多いのが「健康」と「環境」のジャンルじゃな。
例えばどんなんで?
そうじゃな、「アルカリ体質」「酸性体質」という言葉を聞いたことがあるじゃろ。
はいはい。現代人は病気になりやすい「酸性体質」が多いんで、「アルカリ体質」になりましょうって聞きますが・・・あれも迷信で?
科学的迷信ではずい分、古い部類に入るな。医学的に否定されたのは、もう100年ほど昔の話じゃ。
へ?それを未だにあんなこと言ってるんで?
さすがに最近は気が引けるのか「血が酸性になる」とか言って「酸性体質」という言葉をあまり出さなくなったがな。
じゃ、その「血が酸性になる」のが新しい意味での「酸性体質」ってことになるんですかい?
ところがな、血は酸性にはならんのじゃよ。
ありゃま。
酸性、中性、アルカリ性というじゃろ。酸性とアルカリ性のちょうど真ん中が中性。これがph7じゃ。
はいはい。phが小さくなると酸性で、大きくなるとアルカリ性でしたよね。
人間の血液はph7.45。弱アルカリ性じゃ。
ずい分と細かい数字ですね〜。でもそれって、体調なんかでぶれたりしないんですかい?
ぶれるにはぶれるがな。酸性になる程のもんじゃない。例えばな、人間の体温は大体、36度台じゃろ?
へえ。
これが3度も上がるとえらいことになるな。4度も上がると命が危ない。
40度越えちまいますからね。
ところが、外気温は1日のうちでも10度ばかり変わるじゃろ?で、体は体温を一定にしようとして、あれやこれやがんばるわけじゃ。
なるほど。
1日の温度差が大きくなると体調を崩しやすくなるのは、この体温を調節する機能がおっついてこないからなんじゃな。
血液にも同じことが言えるんでがしょ?
いかにもじゃ。じゃからな、血液のphを上下させる要因が体に負担をかけるというところまでは、まあ、嘘ではない。がな、酸性になるというのは嘘じゃ。
で、そのぶれの幅ってえのは・・・・・。
おお、そうじゃったの。体温は3度もくるえば、えらいことじゃが、血液のphの許容変動範囲は、±0.05じゃ。
ってことは、どんなにぶれても、人間の血ってえのはph 7.40〜7.50の間って事ですか?
そうじゃ。それ以上ずれたらな、
どうなるんで。
間違いなく死ぬ。
ありゃりゃ。
科学の実験を思い出せば分かると思うがの、phの0.05なんてのは本当に微妙〜なもんなんじゃよ。それくらい、人間の血液というのはデリケートなんじゃな。
それがまた、なんで酸性になるなんて話しになるんですかね。
最初は「酸性に傾く」という言い方じゃったはずじゃ。
はあ。
これも厳密に言えば間違いじゃが「酸性になる」よりもましじゃ。「酸性に傾こうとする要因が人体に働きかけた時、その影響を抑えるために体に負荷がかかる」で合格点かの。
ずい分長ったらしい
じゃから縮めて、平易にして、終いには迷信になってしまったんじゃな。
こんなんが、いっぱいあるんで?
そうじゃ。それはまた来週にでも。




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