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ご隠居ご隠居 源さん源さん
こんちは〜、ご隠居。
おう、源さんかい。よく来たね。まあ、お上がり。
いや〜、ここへ来る途中えらい目にあっちまいましたよ。
どうしたい。
いやね、高校生同士のケンカが目に入りましてね、止めに入ったら、2〜3発、ついでにもらっちまいまして・・・・。
そらあ、災難だったな。
あんまり頭にきたんで、こっちも2〜3発
殴ったのかい。
蹴りを入れたんで。
蹴る奴があるかい。止めるどころか火に油だよ、それじゃ。
へへへ、面目ねえ。
で、ケンカはどうなった。
まんざら知らねえ奴らでもなかったもんですからね、「まあ、まあ」ってんで、なんとか収まったんですが。
そうかい。しかしね、お前さんも気をつけなきゃいけないよ。最近の若い者は何をするか分からないからね。
まったくで。新聞にも少年の凶悪犯罪が目白押しでさぁ。
ようやっと少年法改正案が与党から出されたようじゃが。
今まで「甘い甘い」って言われていたようですが、それが厳しくなるんで?
まあ、そうじゃな。
今までは、そんなに甘かったんですかい
4〜5人殺してやっと死刑と言われておったな。
4〜5人!そりゃ甘い。
そもそもな、この国は大人に対する刑罰からして甘いんじゃよ。1人殺して大体、7〜8年が相場じゃ。
ありゃま。じゃあ、ここで、あっしがご隠居をブスッとやっても・・・。
おいおい。
冗談ですよ、冗談。
年寄りにそんな冗談言っちゃいけないよ。
へえ。しかし7〜8年ってのもずいぶん甘い。
恐らく世界一、殺人者に寛大な国じゃろうな。
はぁ〜。
で、少年法ってのは、さらに甘い。
それじゃ、殺し得だ。
中には、それを知っていて4人までなら大丈夫と、本当に4人殺しちまった奴まで出てきておる。
殺された奴は浮かばれませんね、そりゃ。
その犯人は殺し方が残忍での。角材で数十回も滅多打ちにして殺したり、殴る蹴るの暴行を加えて血まみれになった相手の頭部にナイフを突き刺したり・・・・。
あの、ご隠居、よ〜く分かりましたんで、その辺で・・・・あっしは、その手の話は苦手なんで。
ああ、すまんすまん。ちょっと言い過ぎたかな。
はぁ〜、しかし大変なもんで。それでも死刑にはならない。
恐らくな。そもそも少年法に携わる法曹界の人間なぞは「一人殺しただけ」なんてことを平気で言うしの。
ありゃま。「だけ」ってことはないでしょう。
そうなんじゃが、「成人」は処罰の対象で「未成年」は更生の対象となっておるからの、今の法律では。そっから出発すると、そういった奇妙な言葉が出てくるんじゃよ。
はあ。
「一人殺しただけで、この少年の未来の可能性を摘み取ることは許されない」とかな、そういった使い方じゃ。
なんか釈然としませんね。
かといって「少年法」の精神も、ないがしろにしてよいとは決して思わんしの。難しい問題じゃよ。
でもね、ご隠居、その話を聞いて、あたしゃ決心しましたよ。
なんじゃ、まさか司法試験を受けるなんて言い出すんじゃないだろうね。
と〜んでもねえ。そんなんじゃないんで。
じゃあ、なんだい。
今度生まれて来たときにゃ、今のカカアみたいな口うるさい女じゃなっくって、少年法の先生と結婚しやすぜ。
はぁ?
人を殺しても許してくれるんでしょう?あっしなんてかわいいもんで。「昼まっから酒のんでるだけ〜」「徹マン疲れで昼寝してるだけ〜」
源さん、あんたばっかりは、更生の可能性ゼロじゃな。




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