最近、歯の治療を受けると、痛くない歯まで処置された・・・≠ニ、不満めいた訴えを聞くことがあります。
患者の要求に応じて、痛い歯のみを処置したり、冠をかぶせたり、義歯を装着することが歯科医療だと一般的に考えられてきましたが、歯科医料の目的は、口腔全体を衛生的に保ち、咬(こう)合を回復し、個体の健康を維持することにあります。
歯は石で築かれた堤防に似て、上下(28-32本)の歯が、前後正しく配列して、はじめてその機能を発揮することができます。
一ヶ所が崩れると、やがて全体のバランスが崩れ、歯と歯の間にすきまができ、それが原因となって障害を生じます。
そこで治療を始めるにあたり、まず衛生的に口腔を保つための刷掃指導し、全体の歯形を採り、X線撮影による骨内の異常の有無をしらべ、患者の訴えを考慮してから治療にかかります。
かつての限られた歯の治療から、全体のかみ合わせを考慮した積極的な治療方法に変化しているのが現代歯科医療の基本的な考え方といえます。このことが理解されていないと、時には医師と患者のトラブルにまで発展することにもなりかねないのです。